探偵の調査をして  
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   一人で調査
 

“歯が痛いから、歯医者行ってくるわ!”
はぁっっっ???
あのー、今日は調査初日ですけど・・・?
なんて、言えるはずも聞けるはずもなく、ぼくは絶句してしまった。

お前一人でも大丈夫やろ?
その言葉、普通のときに聞いていたら、嬉しくないこともなさそうだけれど、今は絶対に聞きたくなかったし。
いろいろ聞いておきたいこともあり、焦ったこともあり、言葉がまとまらないまま代表に聞いていると、責められていると思ったのか、逆ギレしたのか、“もう調査開始時間やろ?”と、キレ気味に電話を切られてしまった。
ってか、悪いのはあんただろ?と、キレた電話に向かって毒づく。

そんな自分が、やたらむなしい・・・。
けれど、時計が8時58分を差しているのを確認して、やるしかない、と腹をくくる。
もし、失敗しても、これは明らかに代表の責任だと、どこかで開き直りながら・・・。

この会社。
救われるところは、社用車でなく、自家用車で営業に回るということ。
少ない社用車ではカバーしきれないらしく、自家用車を使うという手当もあり、結婚している人はけっこう自家用車使用も多いのだとか。
そりゃ、ここから営業に回るのも、通勤さえ、車がなければ難しい環境にあるので、車を持っていない人は面接にさえ受けにこないんじゃないか、と思われるくらい。
バス停も、かなり遠いところに見た記憶はあるのだけれど。

そんなことを考えならが、目は入り口にクギ付け。
すでに2台ほど会社から出たことを確認したが、対象者とは全く違う車種だった。
9時12分。
ちょっと気が抜けてきたところで、対象者のバンが出てきた。

ちょっと焦る。
会社から出てきた道を右に曲がるか、左に曲がるか、それによってぼくの気合も違ってくる。
運の良いことに、そのあとに続く車はなし。
エンジンをかけ、その先を見守る・・・。右か、左か・・・?
対象者が進んだのは、右だ!!!
ぼくにとって、一つ目のラッキー。
ぼくはゆっくりと車をすすめる。
前方に対象者の車を確認し、その道で合流。
1本道を適当な距離を開けて走行。
この先もT字路になっていて、そこには信号がある。
よっぽどでない限り、信号で別れることもないだろう。

車での尾行調査で難しいところ。
適当な距離すぎると、ちょうどバックミラーに写ってしまい、対象者の記憶に残ってしまう。
なので、信号までは距離を取り、信号近くで一気に距離を縮める。
一緒に信号を通過できるくらいの距離までで良いので。
けれど、知らない道で距離を取り過ぎると、とっさの事態に対応できない。
最悪の場合、信号で別れてしまうことも。

車線の多い道路では、わざと1車線ずらして走行することもあるのだけれど、これも失敗につながりやすいので、まだ代表ほどの運転技術のないぼくは、あまりしないようにしている。何年後かには、あれほどの技術が身についていると良いのだけれど・・・。
と、余計なことを考えていると、前方を走っていた対象者が、ハザードをつけてスピードダウン。
そして、路肩に停車してしまった。

 

一緒に停止するわけにもいかないので、ぼくは追い越した。
気がつかれたのか?と、ぼくの心臓はばくばく。
通りすがりに確認すると、携帯電話を片手に話しているところだった。
ちょっとぼくはホッとする。

けれど、この先、どうしたら良いというのだ?




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